そこで、この受賞の機会にオフィスのデザインをしていただいた川口 淳志 様にインタビューをさせていただきました。

まずは賞の受賞おめでとうございます!!TBVはこのサイゴンセンターに移転して2年ほど経ちますが、今回の受賞を期に私たちのオフィスについて、色々とお伺いできたらと思い今回のインタビューをお願いさせていただきました。今回の受賞はどのような経緯だったのですか?

実は今回は、自分で応募したのではなく、BULD様側から声が掛かりました。BUILD Architecture Awardsには建築に関わる様々な賞がありますが、その中のMost Innovative Office Design Project 2019という賞をいただきました。

オフィスのコンセプトは「柔らかく・自然で・暖かい雰囲気の社員から愛される遊び場」と聞いておりますが、もう少し詳しく教えていただいて良いでしょうか?

社員から愛されるオフィスというのは以前のオフィスからの要望だったと思っていて、そこは意識するようにしました。

オフィスは寝ている時間を除くと1日で社員が1番長く過ごす場所なので、仕事のパフォーマンスを上げるための居心地のよさ、快適さを設計時に重視しました。そのため、パステルカラーなど柔らかい色を基調にしてデザインをしました。

また、人数が多い会社ですので、社員同士のコミュニケーションが図れる場になると良いと思い、公園のようなイメージを持って設計をしました。公園自体を作るつもりではありませんが、公園の機能みたいなものをデザインで表現しました。社員同士や知らない人同士が、交流して自由に思い思いに過ごせる場所というのを設計中にも意識していた記憶があります。

川口様が一番こだわった部分はどこですか?

1番目は、セミナースペースです。当時ベトナムの日経企業でオフィスの半分くらいを使ってセミナースペースをつくる会社は珍しかったので、とてもやる気が上がりました。TBV側の要望を聞いて、セミナー、社内トレンニング、ゲーム、食事など、何に使うかの目的をしっかりヒアリングしました。
2番目はフリースペースですね。

フリースペースは、社内イベントによく使わています!毎月誕生日会や、最近では、クリスマスやハロウィンイベントなどはフリースぺースで行われました。実はフリースペースでは週2回Yogaクラスもやっているんですよ~!

いろんな使い方がありますね!Yogaは予想していなかったですが、そのような使われ方をされていて嬉しいです。フリースペースという名のとおり、自由に使ってもらっていますね。

私達は現在開発の上流工程を担うのにとても苦労しています。川口さんも要件がぼんやりしたお客様からはっきりしたお客様がいる中で、うまく彼らと自分の考えをすり合わせたり、期待値コントロールをしたりなど、いろいろ工夫をされていると思いますが、注意していることや、秘訣があれば教えてください。

お客様の要望が一番だと思っていますが、プラスで更に良いものをつくるためは、自分の表現も重要だと思います。それをお客様に満足していただければ、当然次の仕事につながると思っています。

お客様の要望をクリアにするのは最低限当たり前のことで、それは合格点ではないという気持ちでやっています。

設計の行程では、作業しながら考えていくことが多いです。途中で悩んでしまったら、原点に戻って、お客様と再度コミュニケーションをすると、1つの答えが出てくるパターンが多いです。

要望がたくさんありすぎる人は、全部そのまま受け入れてしまうと、逆に思い通りのイメージにならないケースもあります。お客様がどのように考えるか、どのようにしたいかこちらが整理して、デザインを作って見せて一緒に確認作業をし、絞っていくというやりとりが必要です。実際は、デザインする時間よりも毎段階の確認作業(コミュニケーション)の時間が長いかもしれません。

ソフトウェア開発と共通することが多くありますね!私たちもヤフー(日本)の皆様と仕事をしていく上で、コミュニケーションを大切にしています。また、日本側から依頼されたどおりに作業をするだけでなく、ベトナム側からどんどん提案していく関係性が求められていて、私たちもそれに応えられるように努力しています。川口さんのおっしゃるお客様の要望をこなすだけが合格点ではないという言葉は非常に共感します。
また前述のとおり、最近では上流工程に注力しており、日本側から文章にまとめた詳細な依頼ではなく、ざっくりした依頼でもベトナム側で考えて要件をまとめることにも挑戦しており、より双方のコミュニケーションが重要になってきています。
それでは、施工で大切にしていることはありますか?

デザイン通りの実現力が大切だと思っています。デザインが良くてもそのとおりに施工ができなかったり、納期が遅れたら意味がないです。そのため、うちの会社では設計から施工まで担当しています。施工の下請け会社は長年一緒にやっているので、信頼できます。社内に現場監督的なスタッフを置いていて、彼らに情報を都度報告してもらい、施工の管理したり指示を出しています。

ソフトウェア会社のスクラム開発のようですね。TBVでも従来のウォーターフォール型から、スクラム型での開発に力を入れていて、開発を1週間のスプリントに切って、スプリントごとに日本側に都度報告をして、フィードバックをいただく手法に挑戦しています。ソフトウェアと違い、施工は作り直しが難しいので、余計に施工中のすり合わせは大切ですよね!

施工中にトラブルはつきものですが、その中でもしっかり期待通りの完成物を期限内に終わらせるということは一番必要。そのために自身はもちろん、現場の指示者、施工者もプライドを持ってやってほしいと思っています。

自身の仕事にプライドを持つことは、仕事をしていく上で重要ですよね。それが結果的に質の向上にもつながると思います。
今日は参考になるご意見をいただき誠にありがとうございました。
そして、受賞本当におめでとうございます!

  • 写真: Anh Võ
  • デザイン: Loan Pham

2020/02/21