ベトナム + Yahoo! JAPAN が持つ情報技術によって世の中を便利にしたい

という信念を持ってベトナムにやってきたテックベースベトナム社長の白川さんをご紹介します。白川さんはベトナムの文化や人柄に関する知識はゼロからスタートし、今日では日系企業の良い所を持ちながら、一方でベトナムっぽい文化を取り込んでいるテックベースベトナム(TBV)を経営しています。

エンジニア出身でマネージャや人事の経験を持つ白川さんは、エンジニアの心をよく理解して会社を運営し、会社をますます発達させています。では、なぜベトナムなのか? Yahoo! JAPAN がTBVにどのような期待をしているのか?今後のTBVをどうしていきたいのか、白川さんに聞いてみましょう。

こんにちは。テックベースベトナムはどのような会社ですか?

元気でいつも笑顔がいっぱいある会社ですね。技術力にあって、さらに Open mind & Friendly な人が集まっています。技術力+人間力の両方を備えた会社だと思っています。40人の社員で会社を立ち上げましたが、3年経過して150人の社員数となりました。

さて、TBVの親会社は日本の Yahoo! JAPAN です。日本では最も大きなIT企業の1つで、自社サービスを100以上も持っています。TBVでは、そのサービスを Yahoo! JAPAN の開発チームと一緒に開発をしています。ですので、アウトソースの会社ではなくて、自社サービスを開発している会社になります。現在は26個のサービスを開発しています。

TBVは Yahoo! JAPAN 初の海外開発拠点ですね。将来の話ですが、3・5年後のTBVの姿はどのようになるか教えて頂けませんか?

TBVのビジョンは ”To be an intelligent service development company” です。単に言われた仕様通りにソフトウェアを開発するだけではなく、エンドユーザーの生活を便利にするサービスを提案し、それを実現するための開発力を身につけたいと考えています。

この先3年間は、その時点で担当する業務の品質改善と効率化を行いながら、新しい領域にチャレンジすることが続くと思っています。少し具体的にお話しをすると、現時点の品質改善としては、各エンジニアが作り出す設計やソースコードの品質を高めたい。更に、「○○できる?」と聞かれて、「できません」とは言わない開発チームを作りたいと思っています。新しい領域へのチャレンジとしては、上流工程へのチャレンジだと思っています。この部分は業務場所が Yahoo! JAPAN の方が効率的な部分があるので、オンサイト業務も組み合わせながら実現したいですね。実際に、昨年からオンサイト業務はスタートしていて、今後も拡大予定です。

5年後となると、変化の激しいIT業界では予測が難しいのですが、「オフショア」を意識する必要が無い開発拠点になっているでしょうね。日本では「オフショア開発は云々」という議論がありますが、5年後にはそういった議論はなくなり、「あたりまえ」になると思います。それに必要なスキルや経験をあらかじめ社員の皆さんに持ってもらえるよう、キャリア形成の支援をしていきたいと思っています。

なぜベトナムなのでしょう?

海外の開発拠点を検討したとき、世界中の国を検討しましたが、結果としてベトナムになりました。日本との違いはありますが文化的には近いと感じますし、ITエンジニアのレベルが高く、人数も多い。また、大学でIT教育に力を入れていて、今後のITエンジニア数も増えていくと予想できたからです。

個人的には、ホーチミンのエンジニアと仕事をする中で、「彼らと一緒ならばやれる!」と感じたことが大きな理由でした。

今までの3年間は長いようで、短かったでしょうね。この期間にTBVは成長してきていますが、一番印象に残った失敗・困ったことは何ですか?

会社は誰のためにあるか?というと、ビジネス上の顧客と、社員のためだと思っています。それぞれで苦労はありました。

ビジネス上の顧客は Yahoo! JAPAN です。お客様というのはわがままなもので(良い意味で)、彼らのコンディションによって要求することがどんどん変わっていきます。それに追いついたり、先読みして準備したりするのが大変でした。3年前は「とにかくエンジニアの数が欲しい」という要求。その次は、「高いソフトウェア品質」。最近では「新しい技術導入」や、「上流工程からまるごとお願い」という風に変わってきています。特に、ソフトウェアの品質改善のために、開発プロセスの整備には時間がかかりました。

社員に関してですが、キャリア形成支援が会社としてまだ不十分だったため、せっかく入社してくれた社員が退職するようなこともありました。「活躍できる場を準備できなくてごめんね」という思いで送り出したことがあります。

失敗のあとの学びは何ですか?

ステークホルダーのコンディションを把握し、要求を先読みすること。そして今担当している業務の品質を下げないように守りを固めつつ、新しいことを始める必要があると学びました。

また、キャリア形成支援については、社内に様々な種類の業務や開発案件がある事が重要だと思っています。現在進めている上流工程へのチャレンジが進めば、今以上の業務の種類が増えてますし、同時に業務上の自由度も上がると思います。また、TBVは3年後には今の倍の社員数になる予定です。ですので、マネージメントを目指す人にとっても活躍の場が広がると思いますよ。

テックベースベトナムの後は、もしかして「テックベース○○○(他都市、他国)」でしょうか?

はい。準備する事はたくさんあるのですが、チャレンジしたいと思っている領域です。

ただし、まずはベトナムで「Intelligent service development company」を実現してから、それを横展開するような順番で考えています。

会社が発展するかしないかを決める要素は何だと思われますか?

やっぱり「人」ですよね。「人」がソフトウェアやサービスを作っていますからね。

ソフトウェアを開発する人、日本とベトナムの言語や文化のギャップを埋める人、プロセスを決めて運用する人。経理、人事、採用、総務といったバックオフィス業務を担当する人、会社や部門の目標を決めて、チームを組織する人。いろんな役割がありますが、それぞれがプロフェッショナルとして成果を出し、日々成長できる「人」が集まれば会社は発展すると思います。

重要なのは、お互いの違いを吸収できるインターフェースを作ること

初めてベトナム人と触れ合って、感じた違いは何ですか?それと、TBVのメンバーに何を期待していますか?

ベトナムにきて感じた違いは、「活気」です。特に人の目が輝いていることでした。もちろん日本にも目が輝いている人はいますが、ベトナムでは多くの人の目が輝いている。なぜだろうと考えてみると、明るい将来を信じていて、そこに向けて努力をしている人が多いからのように思います。すばらしいと思います。

また、日本で生まれ育った私が仕事をする上で感じた違いは、仕事をお願いするときに日本と較べると報連相してもらえるように、あらかじめ段取りをしていく必要がある事です。また、日本人は細部へのこだわり度合いが強いんだなぁと実感したことです。とはいえ、これらは優劣ではなく多様性だと思っています。

TBVの社員には、それぞれの領域でプロフェッショナルになっていただいて、更に+1つの専門性を持てるようになってもらいたいと思っています。そうすれば、活躍の場がとても広がると思うからです。

逆に、日本人はベトナム人から何を期待されていると思いますか?

日本人は曖昧な言い方をしますね。言いたいことははっきり言ってください、と思われているだろうなぁと思っています。

オフショア開発の現場では、場所が離れるので相手の感情を感じ取るのが難しいですよね。ですから、よりはっきりと伝えることが大事ですね。

次に、ベトナム人エンジニアが日本人と仕事をする上で何が一番困ると思いますか?

日本人は細かいと思うのですね(笑)。。仕事の仕方もそうですし、アウトプットについても。ですので、その辺を汲んでもらって、仕事の途中で報連相をしてもらったり、決められた品質のアウトプットを出してもらったりすると嬉しく思います。また、アウトプットの品質基準は決められますが、何か+αを含められるようになると良いですね。

あと、遠慮無くコミュニケーションを取ってもらえればと思います。日本人はシャイですので、ベトナム人エンジニアから話しかけてもらえると嬉しいです。

遠距離恋愛のことはご存知ですか。お互いに愛しているカップルであっても遠距離になると、理解し合えない時や、納得できない時があります。Yahoo! JAPAN とTBVは、まるで「遠距離の関係」のように、時差があり、文化や習慣、考え方まで違っています。こういう違いをどのように解消して、仲良く仕事を進めるのですか。

なるほどぉ。遠距離恋愛かぁ。そういった面はありますね。

重要なのは、お互いの違いを吸収できるインターフェースを作ることだと思っています。インターフェースには2つあると思っていて、1つ目は開発業務、2つ目は人間関係です。

開発業務については、双方で合意した開発のプロセス、コミュニケーションルール、QCDを守って仕事することが大切ですね。また、人間関係については、日本側とベトナム側の窓口となる人同士の信頼関係を作る事が大切です。開発業務で実績を重ねることと、TV会議や出張などのリアルなコミュニケーション量を増やすことも必要だと思います。

日系IT企業に応募したいエンジニアに対して何を伝えたいですか。

日系企業の特徴は、人を第一に考えた経営がされていることです。心配しないで門を叩いてみてください。

TBVでは「インターンシッププログラム」というものがあるそうですが、内容や目的を少しシェアしていただけませんか。エンジニアさんだけでなく、未経験の学生もTBVに入る機会になりますので、興味のある学生に対してすごく貴重な情報だと思います。

大学の授業でインターンシップがありますが、TBVでも受け入れをしています。これまで実績があるのはカントー大学ですが、今後は広げていく予定です。

約2ヶ月間のプログラムになります。担当の先輩社員から、実際の仕事で使用している開発プロセスや開発環境を学びます。その後、学んだ事を活用して、社内で利用するツールの開発を行っていただきます。

開発業務だけでなく、期間中に行われる色んなイベントにも参加してもらって、実際の会社で実際の仕事を体験していただけるプログラムになっています。

 

皆さん、テックベースベトナムについてよく理解できたのでしょうか?

TBVは Yahoo! JAPAN という日本風の企業に、ベトナムの選りすぐりのエンジニアが集まっている素敵な環境です。経験が多いエンジニアだけでなく未経験のIT学生も大歓迎なので、ぜひこちらへようこそ!是非是非テックベースベトナムと一緒にテクノロジーの世界を歩んでいきましょう。

  • 記事  :Hoai Nho Do
  • 写真  :TBV Camera Team
  • デザイン:Minh Tong, Duc To

2018/08/10